2017
01.28

師匠の死 塚田圭一先生ご逝去

できごと


訃報。今朝、届いたのは恩師の死を告げる便りでした。

塚田圭一先生、享年82歳。フジテレビ常務を経て、共同テレビジョンの社長、会長と勤め上げ、ご勇退。以降は、立ち上げ当初からかかわって来られた歌舞伎のイヤホンガイドのキャスター、そして歌舞伎研究家としてご活躍でした。

盟友、森光子さん、中村勘三郎丈を悲しく見送られつつも、みなさまの生前と変わらず、番組を作り続けておいででした。先生が作られた、森さんや中村屋さんのフジテレビのドキュメント番組をご覧になった方も多いかと。また穏やかで思慮深く、歌舞伎の楽しさを伝える名キャスターぶりを耳にされたことも多数おいでと思います。また平成中村座海外公演の実行委員長も務められ、まだまだこれから、いっそうご活躍と思っておりましたのにとても残念でなりません。

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元旦には、直筆のメッセージこそなかったものの、いつものように年賀状を頂いており、今日までお元気と信じて疑わずにおりました。ですが12月31日のご逝去……。これまで報道もなく、突然のことでに戸惑い、嘆き、涙が止まりません。

塚田先生はいうならば私の”歌舞伎の師匠”。24年前に離婚し、心のままに出版界に飛び込んだ私は、筋金入りのフリーランス、いわゆるたたき上げ。学ぶ伝手を持ちませんでした。

駆け出しの私が選んだ道は子どものころから好きだった歌舞伎や狂言のスポークスマン。いまではかつての私の経歴をご存じない方の方も多いですが、狂言の和泉流二十世宗家和泉元彌さんの取材、書籍制作に始まり、尾上菊之助丈の取材、中村獅童さんのファースト写真集の制作、花形・名優のインタビューなど90年代後半から2000年中頃まで伝統芸能を広く伝えることが使命、ライフワークとして情熱を燃やし、追いかけておりました。


塚田先生といえば6歳からの歌舞伎好き。芝居小屋に通いつめ、早稲田大学文学部演劇学科の卒論のテーマ『小芝居』の取材の為に通った、かたばみ座にご卒業後在籍。 その後、菊五郎劇団の座員を経て開局時(1958年)のフジテレビに入社したご経歴。 主にドラマの演出を手掛け、名作を生み出してこられました。

出逢いは17年程前になるでしょうか。当時、歌舞伎の取材がしたいと願っていた私にサンスポの方が先生をご紹介してくださいました。当時の私は片っ端から舞台を観て、書物を読むだけが精一杯。意欲こそ有り余るほどありましたが一方で長年歌舞伎を観続け、体感してこられた方の足元にも及ばないと未熟さを痛感しておりました。

そこに現れた先生はまさに「歌舞伎の神様」。最初にお目にかかった別れ際、「ご紹介頂いたのだから、これからは気兼ねなく訪ねていらっしゃい」とお声をかけてくださいました。以降、九段下にあった共同テレビジョンの社長室、やがて浜離宮の会長室に毎月のように押しかけては、先生から歌舞伎名作や歴史について、名優たちの芸や楽屋話、さらにテレビ制作の裏側までさまざまなお話を聞かせて頂きました。

歌舞伎の取材をしたいと願いつつも進めずにいた時、背中を押してくださったのも先生でした。「あなたはもう十分に舞台を観たし、熱意もある。取材にキャリアなんて関係ないですよ。思い切っていきなさい、あっち(役者)が受け止めてくれるから」そう言葉と勇気を授けられ、私は夢を現実にすることができたのです。


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私が2001年より主宰していた尾上菊之助丈のファンサイト内ではイヤホンガイドの「耳できく歌舞伎」をもじって「ツカちゃんのインターネットで聴く歌舞伎」と名づけた連載もして頂きました。

また未熟なために仕事で躓き八方ふさがりになったのを励ましてくださったのも先生でした。ある時、相談にあがり珍しくポロポロと涙を流して嘆く私に先生が「泉美さんは間違ってはいないけど、常に竹のように真っ直ぐでいると難しいこともあり、いつか折れてしまう。時に柳に風であるのも大事だよ」と諭してくださいました。

また「仕事バカであれ」、と激励してくださったのも先生でした。自分の好きなことならバカになれる。たとえ人に笑われ、損をし、指を指されても構わない。やり続ければ真実になる。そのうちバカの仲間が増え、支え合い志を成し遂げられるのだと。歌舞伎の師匠であると同時に私の人生の師、生涯唯一の師匠でした。仕事においても、ここぞという時には力強いバックアップを差し伸べてくださった方。ずっとその背を目指し、自分をいつか先生のように誰かの励みと力になりたいと思い続けてきました。

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一昨年の川島なお美さんに続き、御恩ある方になんらお返しもできないまま、こうして見送る悲しさとふがいなさが複雑に入り混じり、ただ茫然とするばかり。とはいえ、偉大なる師を持った幸せを胸に心願成就のため、邁進することを改めて誓っています。すでにご葬儀も終えたとのことで、先生にお別れを言うことも叶いませんでしたが、香を焚き、花を手向けて手を合わせ、感謝と共にご冥福を祈っております。

先生、ありがとうございました。もうすでに森さん、勘三郎丈、小山三丈ら皆々様と再会され、芝居談義に花を咲かせておいでのことと思います。どうぞ、来世でも私の師として導いていただけますようお願い致します。不肖の弟子より。

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